近年、知名度が上がっている「越境EC」についてご存知でしょうか?

少子高齢化により国内市場が縮小する中で、海外に新たな市場を見出そうとする日本企業は年々増加しています。

中国や東南アジアなどの消費が成長する中、高品質な製品の需要はますます伸びており、越境ECを通じて、海外の消費者に製品を販売する越境ECという手法が注目を集めています。

本記事では、越境ECの定義から、仕組み、物流や決済、そして実際に取り組む方法までの全体像が分かるように、紹介させていただきます。

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越境ECとは?

越境ECとは、インターネット通販を通じて、国境を超えた電子商取引を行うことです。もう少し、分かりやすく言い換えるなら、ECサイトを使って、海外の消費者に物を販売する取引のことです。

越境ECという取引形態が存在する前、海外の商品が欲しい場合は、直接現地に行って買い付けるか、あるいは現地のバイヤーに購入を依頼する手法しかありませんでした。

しかし、越境ECにより、海外で販売されている商品を、まるで国内で購入するかのように、ECサイトを使って購入することができるようになりました。

越境ECの市場規模は120兆円になる!?

実際に越境ECはどれほどの市場規模があるのでしょうか。まずは、全世界の越境EC市場規模を見てみましょう。

世界の越境EC市場規模

図:全世界の越境EC市場規模推移

出典:CROSS-BORDER E-COMMERCE TO REACH $1 TRILLION IN 2020

2014年には世界で約30兆円だった越境ECの市場規模は、2018年には120兆円に成長すると予測されています。たった4年で、90兆円もの新たな市場が生まれることは、非常に大きなインパクトがあります。

では、次に日本から海外への越境EC市場規模を見てみましょう。

現在、日本から海外にECを使って販売する越境EC市場のうち、大きなシェアを占める、中国とアメリカの市場規模をご紹介します。

中国→日本の越境EC市場規模

中国人が日本製品を好んで購入することは、メディアでも頻繁に報道されます。2015年頃に起こった「爆買い」という、訪日中国人による、オムツや化粧品などの日本製品の買い占めは、記憶に新しいかと思います。以下の表は、中国人消費者が日本からECを通じて購入する市場規模を表したものです。

出展:経済産業省「平成26年 電子商取引に関する市場調査」

中国から日本の商品をECで購入する、「中国→日本の越境EC市場規模」は、2014年時点では6,064億円となっており、2018年には2.2倍の1.4兆円に成長すると見込まれています。

アメリカ→日本の越境EC市場規模

中国の次に、日本からECで商品を購入する国はアメリカです。以下の表は、アメリカ→日本の越境EC市場規模を表したものです。

出展:経済産業省「平成26年 電子商取引に関する市場調査」

2014年には4,868億円だった市場が、2018年には7,803億円になることが予測されています。中国ほどの伸びはありませんが、4年間で市場規模が1.6倍にもなることが予測されています。

越境ECに成功している日本企業3つの事例

それでは、実際にどのような日本企業が、越境ECに実際に取り組んでいるのでしょうか?越境ECの成功事例を3つ紹介します。

キリン堂

ドラッグストアーチェーンのキリン堂は、2014年に中国最大のアリババグループの越境ECモール「天猫国際」に出店を開始しました。2015年には、中国では「独身の日」と言われる11月11日に、たった1日で4億5000万円を売り上げ、前年比で2.4倍の実績を上げることができました。

Tokyo Otaku Mode

Tokyo Otaku Mode(トーキョー・オタク・モード)は、海外に対して日本のアニメやゲームなどのサブカルチャー関係の情報発信を発信し、グッズ販売を行うサイトです。2017年6月時点でFacebookページには1900万人以上のいいねを獲得しており、日本のサブカルチャー好きの外国人から高く評価されています。サブカルチャー好きの外国人の熱狂的なファンに支持されており、自社のロジスティックセンターから全世界に商品を配送しています。

北海道お土産探検隊

日本ではよく知られている北海道のお土産である「六花亭」「白い恋人」などを海外に販売する通販サイトです。2012年に楽天で海外販売ページを開設しましたが、初年度の年商はたった300万円程度でした。しかし、2013年には、年商が3000万円、2014年には1億円を超えました。メインの顧客は中国人であり、アメリカや台湾、香港からも購入されているようです。

越境ECの仕組みは?

越境ECではどのように海外に対して商品を販売しているのでしょうか。

まずは、越境ECのサプライチェーンの全体像を把握しましょう。

図:越境ECの全体像(モール型)

越境ECに取り組む上で、図のようなサプライチェーンを構築することが一般的です。

1.商品の流れ

現地の消費者から注文が入ると、まず出店者から国内の倉庫に商品が発送されます。国内倉庫から、国境を超えて、現地の倉庫に商品が発送され、そこから最終的に現地の消費者に商品が届けられます。

2.お金の流れ

現地の消費者が、ECサイト、あるいは決済代行サービスに購入代金を支払います。現地ECサイトが一旦売上金を預かり、各ECサイトの規定の期日に、出店者に売上が振り込まれます。

それでは、次の消化ら、越境ECの2つの仕組みを紹介させていただきます。越境ECで海外に商品を販売するためには、以下の2つの方法がります。

▶︎①自社で越境ECサイト構築をする

▶︎②現地のモールに出店・出品する

では、それぞれの仕組みと、メリット・デメリットをご紹介します。

自社で越境ECサイトを構築する場合

自社の越境ECサイトをの構築を行う場合は、現状の国内向けのECサイトを、海外への販売のために、多言語対応や決済手法などを行い、カスタマイズすることです。そのためには、システム開発で越境ECに対応させる方法か、越境EC専門のカートを導入するかの、いずれかの方法となります。

自社サイトで越境ECを行うメリット

カスタマイズがしやすい

自社のサイトで行うため、デザインの変更や、細かいPDCAサイクルによる運営が可能になります。

ブランディングがしやすい

デザインや、キャンペーンなどを自由に行えるため、自社の独自性を出しやすいです。また、後述するモール出店と異なり、他の商品と比較されにくいため、消費者に商品を訴求しやすいのです。

利用料が安い

自社でシステム構築を行う場合は、モールに支払う手数料や、出店料がかかりません。そのため、モール出店の場合と比較すると、安く越境ECに取り組める可能性があります。

手数料がかからない

現地のモールに出店をすると、販売額から一定の手数料が引かれます。しかし、自社で構築した越境ECシステムであれば、モールに出店していた場合の手数料がかかりません。

自社サイトで越境ECを行うデメリット

集客がしにくい

自社の越境ECサイトは、立ち上げた後に、いかに集客を行うかが成功のカギとなります。立ち上げ当初は、アクセスがゼロに近いため、海外向けのプロモーションを一から行う必要があります。

自社開発の場合、工数がかかる

越境EC用のシステム開発を行う場合は、エンジニアのリソースや、人件費、システム開発工数がかかります。

現地モールを利用する場合

現地の大手ECモールの中で、商品を販売する手法です。現地のECサイトを利用する場合、出店者単独では、法律や規制上の理由でモールに出店することが困難なため、出店者の間に「販売パートナー」が入ることが一般的です。販売パートナーは、出品代行や、マーケティング、カスタマーサポートなど、EC運営費必要な業務を代行します。

現地モールで越境ECを行うメリット

集客がしやすい

既に集客力があるモールのため、出品・出店直後から販売ページにアクセスを集めることが可能です。

ユーザーから信頼されやすい

中国や東南アジアなどの国では、詐欺の被害に遭わないように、購入者はモールの信頼性を重視します。そのため、既に信頼を得ているモールであれば、よりユーザーが安心して購入しやすくなります。

運営業務を代行してもらえる

販売パートナーに運営を委託することで、煩雑な運用業務をアウトソースすることができます。

現地モールで越境ECを行うデメリット

モールへの出店料がかかる

ECサイトによっては、初期費用として、モール出店料が発生することがあります。

手数料がかかる

売上からモールへの手数料が引かれるため、自社のECサイトと比較して、利益率が下がります。

購入者情報が入手できない

購入者情報はモールが保有しているため、メールアドレスなどの顧客情報を得ることができません。

中国の越境ECで利用できるサイトは?

越境EC市場の中で最も注目されている、中国の越境EC専門のサイトを2つ紹介します。

天猫国際(Tmall Global)

天猫国際(Tmall Global)とは、中国最大級のアリババグループが運営するECモール「天猫(Tmall)」の越境ECモールです。

2017年の時点で、60カ国以上の企業が出店しており、15,000以上のブランドが販売されています。

2017年11月11日の「独身の日」には、1日で売上が合計約178億ドル(約1兆9,400億円)に達し、日本でも話題となりました。

京東全球購(JD Worldwide)

「京東全球購(JD Worldwide)」とは、中国第2位のECサイト「京東商城(ジンドン)」の、越境EC専門サイトです。2014年にはナスダックに上場し、中国ではアリババやテンセントなどのIT企業と肩を並べる存在です。

京東全球購(JD Worldwide)は2015年に開設され、450社以上の企業と、15万点以上の商品、1200以上のブランドが登録されています。

 

中国以外の越境EC動向は?

Ebay(イーベイ)

アメリカで誕生したオークションサイトです。主に、アメリカやヨーロッパ向けに、越境ECで販売する際によく利用されます。欧米向けに商品を販売する場合には、最適なモールです。

LAZADA(ラザダ)

LAZADA(ラザダ)は、東南アジア最大のECモールです。タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールなどの、東南アジアの主要国で圧倒的な存在感を誇っています。

越境ECに必須な3つの物流形態

越境ECに取り組む際に、どのように現地消費者に配送を行うのでしょうか。越境ECに取り組む上で、3つの物流の形態をご紹介します。

1. 出店者が、日本から現地消費者に直接配送する

注文が入れば、日本から直接現地消費者に発送するモデルです。一般的には、EMSなどの郵便が使われることが多いです。外部業者を利用しないことでコストが削減できるなどのメリットがある一方で、1回あたりの送料が高い、配送作業などの手間がかかるとうデメリットがあります。

2. 提携業者の国内倉庫から、現地消費者に配送する

注文が入った後に、提携業社が保有する国内の集配拠点に商品を配送し、現地消費者への配送を代行してもらうモデルです。出店者が毎回海外への配送を行うコストが削減される一方で、現地消費者への配送スピードが落ちるというデメリットがあります。

3. 提携業社の現地倉庫に配送し、そこから現地消費者に配送する

現地の提携業社の倉庫に、あらかじめ在庫を保管しておき、注文が入れば現地消費者に配送するモデルです。送料が安くなり、配送期間が短縮される一方で、企業側には現地に在庫を保管するリスクが増大します。

越境ECに取り組む上で知っておくべき「保税区」のこと

現地消費者に商品を配送する際、「保税区」を利用することで、様々なメリットが享受できます。「保税区」とは、一時的に関税の徴収が猶予される区域のことで、港や空港の近くに設けられています。

政府公認であるこの区域は、「海外」とみなされ、現地の法律とは異なっています。越境ECでは保税区が利用されることが多く、特に中国の越境ECで頻繁に利用されています。

越境ECで保税区を利用するとは、どのようなことなのでしょうか。

まず、出店者が現地の保税区に商品を配送します。そして、ECから注文を受けると、現地保税区の倉庫から現地消費者に対して商品が発送されます。

現地消費者に直送するモデルと比較した場合、図にすると以下のようなイメージです。

それでは、保税区を利用するメリットには何があるのでしょうか?4つに分けてご紹介します。

1. 関税が最小限に抑えられる

保税倉庫から出荷する商品以外には、関税が課されないため、最小限のコストで現地に配送できます。

2. 配達までの日数が短い

現地の保税区から出荷するため、日本から直送するよりも、配達にかかる日数が抑えられます。

3. 返品対応が用意

万が一返品が発生した場合、直送モデルであれば、日本国内に返品するか、現地で処分されてしまいます。しかし、保税倉庫を利用すれば、現地倉庫で返品の受付ができます。

4. 「正規ルート」のため、信頼性が高い

越境ECでは、いわゆる「グレーゾーン」の貿易が行われることが多いです。そのため、政府公認の保税区モデルでの発送が、消費者から信頼を得やすいのは明白です。

このように、保税区を利用すれば、日本から現地消費者に直送する上で、非常に多くのメリットがあります。

越境ECに必須の決済はどうする?

越境ECに取り組む上で、物流と並び非常に重要な条件として、決済機能の整備があります。ここでは、モール出店の場合と、自社サイトの場合に分けて解説します。

現地モール出店の場合

モールに出店する場合は、既にモールに決済機能が実装されているため、自社が追加で導入すべきものはありません。また、モールにはよりますが、現地のECモールで支払われた売上金額は、日本の銀行口座で受け取ることが可能です。

自社サイトを構築する場合

自社で越境ECを構築する場合、顧客が利用する手法に応じて、決済手段を実装しておく必要があります。

クレジットカード決済の他に、アメリカであれば、Paypal、中国であればアリペイか銀聯が必須です。

越境ECに取り組む方法

いざ、越境ECに取り組もうと思われた場合、出品までにどのような手順で行なっていくべきなのでしょうか。

1. 「モール出店」「自社ECサイト」のいずれかを決める

まずは、どちらのモデルで越境ECに取り組むか、決定する必要があります。ここでは、より成功確率の高い「モール出店」の手順をご紹介します。

2. 販売パートナーを見つける

現地モールへの出店を行う場合、現地にネットワークを持つ日本企業を、販売パートナーとすることをおすすめします。販売パートナーは、現地モールへの出店審査の代行、マーケティングリサーチ、商品の販売代行、出品代行など、越境ECに取り組む上での煩雑な業務を代行してくれます。

3. モールへの出店申請

モールに出店を行う上で、モールの条件を満たすための書類作成や、担当者との交渉が必要になります。

4. カスタマーサポート体制の構築

ECモールではカスタマーサポート体制を構築することが非常に重要です。クレームが起きてしまった場合の対応や、商品の質問など、リアルタイムで対応できなければ、店舗の評価を落としてしまい、販売のネックになりかねません。

5. 物流ネットワークの構築

前述した物流形態のうち、どれを採用するのかを決め、物流会社を選択する必要があります。

6. 決済口座の整備

各ECサイトの規定に準ずる形で、売上が振り込まれる口座を開設する必要があります。

5. 販売ページの作成

商品を紹介するためのページや、商品画像の登録、文言の作成を行う必要があります。

6. マーケティング、ブランディング

モールに商品を出品してからが、本当の勝負の始まりです、いかに、認知を形成し、販売を加速させるかは、ブランディングやマーケティングにかかっています。

モール出店型の越境ECに必要な費用

モール出店でかかる費用の項目をまとめてみました。これは、利用するモールや販売パートナーによって、大きく変わるため、あくまでも一般的な例として紹介します。

モールにかかる費用 出店費用
年会費
手数料
配送関連費用 配送費用
倉庫利用料
関税
販売パートナーにかかる費用 代行手数料
販売ページ制作料
その他マーケティング費用

 

越境ECに取り組む上での5つの課題とは?

越境ECは、「とりあえず出品すれば売れるだろう」といった、甘い考えでは厳しいの実情です。越境ECで成功するために、クリアすべき課題を確認しておきましょう。

1. 商品の認知を上げる

現地消費者にブランドの認知が浸透していない場合は、認知を拡大させることが重要です。モールに出店した後に、いかにプロモーションやキャンペーンを行うかが、大変重要になります。

2. 価格競争力を持つ

世界的にみて、日本製品は「高品質・高級」というイメージがありました。しかし、近年は日本製品を安く仕入れる業者が増えいたり、安くてもクオリティの高い製品が増えてきていたりと、「いいものを出せば売れる」という考えでは、失敗する確率が上がります。そのため、できる限り価格を抑えられるように、値付けをする必要があります。

3. 在庫の管理を徹底する

せっかく注文が入っていても、在庫を切らしていれば、消費者の期待を裏切ってしまうことになります。そのため、常に需要と供給のバランスをとりながら、在庫を調整し、品切れの機会損失を最小限にする努力が必要になります。

4. 日本の常識を捨てる

日本人に商品を売る感覚で、現地消費者に対してマーケティングを行うと、失敗するリスクが高まります。そのため、現地のマーケットに詳しいパートナーと、現地消費者に受け入れられるために、ローカライズを行う必要があるのです。

5. 現地モールとの関係性構築

現地モールに出店を行う場合、モール担当者との人間関係がとても大切です。出品の審査からキャンペーンの実行に至るまで、モールの担当者と積極的にコミニュケーションをとることで、より有利な状況を作り出すことができます。

越境ECで、世界に市場を広げよう!

日本国内市場が縮小する中で、世界的に越境ECは拡大しています。そのため、今後、国内のあらゆる企業が越境ECを導入する日が来るでしょう。まだ日本で越境ECが注目され始めてから数年程度ですが、長期的に非常に価値のある投資として、今のうちから越境ECに取り組み始めましょう。